今や米PayPal社のオンライン決済サービスを利用するのは、オークションサイト『eBay』でお菓子の「ペッツ」の容器を買う人たちだけではない。『PayPal』は、オンラインカジノの決済手段として人気急上昇中なのだ。
PayPalを決済手段として受け入れるオンラインカジノサイトは、今年第1四半期に500近く増え、3月31日時点で以前のほぼ倍の1022サイトになったと、PayPal社は述べている。
このように活況を呈しているとはいえ、PayPal社のオンラインカジノサイトとの取引は、あいにく米国では違法とされる恐れがある。
「ギャンブルを促進したり助長したりすれば、違法行為として有罪になるかもしれない。われわれは仲介者に、責任が生じることを伝えるよう努めている」と、ニューヨーク州検察当局のインターネット局責任者ケン・ドライファッハ氏は説明する。ニューヨーク州では、外国のギャンブルサイトが米国から年間40億ドルを吸い上げていると推定している。
オンラインギャンブルを明確に禁止する連邦法を成立させようとする取り組みは暗礁に乗り上げているが、ギャンブルに対するニューヨーク州の厳しい姿勢がシティバンクを動かした。米国最大のクレジットカード発行者シティバンクは6月、インターネット・ギャンブルでのシティバンクのカード使用を禁止することに同意したと発表した。すでにそれ以前に、米バンク・オブ・アメリカ、米フリート、米MBNA、米チェース・マンハッタンを含む大手銀行数行が、自らが発行したクレジットカードをオンラインギャンブルに使用することを禁じる方針を打ち出していた。
ドライファッハ氏によると、オンラインギャンブルの「悪」影響から市民を守るため、ニューヨーク州などの州と連邦の規制当局は現在、PayPal社などのノンバンク金融サービス会社に目を向けている。
PayPal社は、公募増資前の情報開示制限期間中であるとして、オンラインギャンブルにおける同社の役割についてコメントを避けた。しかし、米証券取引委員会(SEC)への提出書類では、ギャンブルサイトを「よりリスクの高い」取引先と述べており、サービスを提供することの危険性を十分承知していることがうかがえる。
PayPal社は最近提出したこの申請書類の中で、オンラインカジノとの取引が、カジノの「不確実な」法律上の位置づけによって危険にさらされる恐れがあること、そして「民事および刑事訴訟、行政措置、また、とりわけマネーロンダリングや違法行為幇助などでの訴追」を招く可能性があることを認めている。
PayPal社は、そうしたリスクを背負う代わりに、2002年にインターネット・ギャンブル業界から1600万ドル以上の売上を得ることを見込んでいる。すでに今年、通常よりも高い手数料を支払うオンラインギャンブル業界からの売上は倍以上に増え、同社の売上全体の8%を占めている。
こうしたメリットはあるものの、PayPal社は、自社に対して何らかの措置がとられるとすれば、それは「重い罰則や罰金」となる恐れがあり、「いずれも事業に深刻な打撃を与えかねない」ことを認めている。
多数の大手銀行がオンラインカジノでの決済を禁じたのは、まさにこのリスクのせいだった。米ベア・スターンズ社の最近の調査によると、各銀行が決済を禁止した影響で、今年上半期のインターネット・ギャンブル企業は成長率が半減するかもしれないという。
ベア・スターンズ社のマイケル・テュー氏によれば、結局のところ、クレジットカードでオンラインギャンブルをする「大きな魅力の1つは、貸付限度額まで賭けられることだ」という。
このようにクレジットカードがあけた隙間を埋めるのが、PayPalだ。PayPalのサービスを使うと、ユーザーはオンラインでの支払請求を安全にクレジットカードや当座預金口座に回すことができるため、クレジットカードでの決済禁止を迂回する方法として宣伝されている。
「君が私と同じなら、最近がっかりしているはずだ。クレジットカード会社は多くのカジノ利用者にオンラインカジノでの決済を認めていない……ではどうしたらいいか?簡単だ。PayPalを使おう!」。これは、数ヵ月前から続々と出現している独立系サイトの1つ、『PayPal・カジノ・ネット』(PayPal- Casinos.net)に掲載されているメッセージだ。
『ギャンブリングナビゲーター・コム』(GamblingNavigator.com)にも同様の記述がある。PayPalは「オンラインカジノで大変人気が高まっています。あなたのクレジットカードの発行銀行がオンラインカジノでの決済を拒否した場合、便利な代替手段になるからです」
米ビザ社の広報担当者によれば、『ビザ』の加盟銀行は、インターネット・カジノ業者が使っている認証コードを利用して、カジノ業者の決済を識別し、オンラインギャンブルでのカード決済を阻止できるという。
しかし、ユーザーがPayPalを使ってオンラインギャンブルをし、1600万人のPayPalユーザーの大半と同様に、支払を自動的にクレジットカードに回すよう設定したらどうなるのだろうか?
こうした場合にも、ビザカードの加盟業者の識別コードがPayPal社に伝えられるのだろうか。PayPal社の技術は、個々のビザカード発行者によるインターネット・ギャンブル決済禁止措置を尊重できるのか。こうした疑問に対し、ビザ社の広報担当者はコメントを避けた。
一方、米マスターカード社は、PayPal社のような中間業者を通してオンラインギャンブルの決済を行なうことを全面的に禁じている。上級顧問のジョシュア・ピアーズ氏によれば、同社ではギャンブル決済の発見や阻止は、PayPal社に任せているという。しかし、PayPal社による阻止方法について、ピアーズ氏は詳しく語ることを避けた。
ワシントンDCのアレント・フォックス法律事務所で、コンテストおよび賞金レース関連業務の責任者を務めるアンソニー・ルポ氏によれば、悪質なサイトはPayPal社やカード会社の認証システムの抜け穴を利用し、簡単にギャンブル決済の禁止措置をすり抜けることができるだろうという。
「ギャンブルサイトはただ単に、別のコードを使って『サービス料』という名目で請求すればいいのだ」とルポ氏。
ビザ社の広報担当者によると、同社では加盟業者が決済に適正なコードを使用しているかを日常的に検査し、違反があれば罰金を科しているという。同じくマスターカード社も業者の監視を行ない、規則に違反した場合は罰則を適用できる、とピアーズ氏は説明した。
ドライファッハ氏によると、今のところ、ギャンブルサイトはクレジットカードの認証コードを改竄する必要などないという。ニューヨーク州の調査により、多くの決済機関がオンラインギャンブルの決済コードをただ黙って見過ごしていることが明らかになったという。
「多くの場合、金融機関は決済のコードを追跡はするが、阻止には踏み切らない。目をつぶったり、故意に何らかの役割を果たしたりすることは、許される行為でないばかりか、合法でもない」とドライファッハ氏。
しかし今のところPayPal社は、オンラインギャンブル業界から売上を得ることには大きなリスクを冒す価値があると考えているようだ。
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